狭野神楽(国指定重要無形民俗文化財)
期間
毎年12月の第1土曜日
狭野神楽
狭野神社(旧名狭野大権現社)の年中行事の一つです。祓川と同様、400年ほど前にはすでに行われていたと考えられています。延宝2年(1674)には、古文書の中に「神楽三十二番」「社家」などの記述が見られる事から、江戸時代初頭には、すでに神楽を実施できるだけの社家組織が成立していたと思われます。また、文政6年(1823)作成の番付表を見ると、39番という大がかりな神楽であった事がわかります。
以前は、旧暦の9月16日に行われていましたが、現在は毎年12月第1土曜日に行われています。
神社での神事の後、狭野神社第2鳥居近くの広場を舞庭とし、真剣を使用した勇壮な舞や面を着用したユーモラスな舞などが、翌朝の日の出まで行われます。
舞の中では、子供が真剣の刃を握って舞う「踏剱」や、舞庭で酒を飲みながら舞う「御酔舞」、稚児をイメージさせる「花舞」、南九州でしか見られない、竪杵(たてぎね)と箕を使用した「箕剱」などがあります。また、楽屋で「アタリガネ」と呼ばれる念仏踊り系統の鐘(この近辺では輪太鼓踊りに使用しています)を使用しているのも特徴です。
以前は、狭野神社の社家を中心に行われていましたが、現在は狭野地区の行事として取り組まれ、狭野地区に縁のある地区外からの参加者も受け入れる等、後継者育成に取り組んでいます。
指定の経緯
- 昭和61年12月1日、高原町無形文化財に指定
- 平成15年4月24日、宮崎県無形民俗文化財に指定
- 平成22年3月11日、「高原(たかはる)の神舞(かんめ)」として国重要無形民俗文化財に指定
最近の主な公演・出演履歴
- 平成19年10月28日、第49回九州地区民俗芸能大会(福岡市、アクロス福岡)
- 平成24年10月20日、第1回神楽の祭典(宮崎市、宮崎県庁本館前特設ステージ)
- 平成25年8月24日、第16回南九州神楽まつり(鹿児島県霧島市、霧島神宮)
- 平成26年2月21日、Miyazaki Floor(大阪市、グランフロント大阪、宮崎県主催)
- 平成29年11月19日、みやざきの神楽 奈良公演2017(橿原市立かしはら万葉ホール、宮崎県主催)
- 令和3年9月11日、光と神話の世界(メディキット県民文化センター演劇ホール、第35回国民文化祭、第20回全国障害者芸術・文化祭宮崎県実行委員会主催)
開催日
毎年12月の第1土曜日 19時頃~
※令和5年度については、令和5年10月現在、通常通り12月第一土曜日の2日開催予定です。
開催場所
狭野神社第2鳥居前(雨天時;鳥居の隣にある北狭野神武ふるさと館)。
参考
- 文政6年番付
宮入・御祓・祝言・山迎入・縄開眼・壱番舞・神楽・神師・壱人剱・飛出・地割・金山・志め・高幣・興津・小ふさ・柴荒神(右之問)・踏剱・鉾舞・臣下・大神楽・御酔舞・花舞・龍蔵・問神師(右之問)・箕剱・長刀・住吉(右之荒神)・本剱・御笠(右之荒神・右之問)・武者神師・神化・縄入荒神(右之問)・太刀から・部屋入・縄荒神(右之問)・かふならし・柴起・日明 - 明治43年神歌本
大鞁之事・一番舞・神楽歌・神師・壱人剱・飛出・金山・志目・高幣・四つの事・小房・柴荒神問・踏剱・鉾舞・臣下・大神神楽・御酔舞・花舞・龍蔵・問神師・箕剱・長刀・住吉・剱・御笠問・武者神師・神化・縄入荒神・大力から皇明神・武者神師 - 平成18年の番付
宮入・大鞁之事・一番舞・神師・飛出・地割・金山・志目・高幣・四つの事・臣下・踏剱・花舞・長刀・箕舞・柴荒神・本剱・住吉・壱人剱・御笠舞・大神楽・鉾舞・御酔舞・龍蔵・小房・武者神師・手力男
※番付内容については下記表を参考にしてください。なお、時間については予定ですので、当日は状況により前後します。
また、神楽は集落の年に一度の大きな行事です。神楽を見学する際には、焼酎ないし初穂料などをおさめるのが習わしとなっています。
番号 | 行事名 | 予定時間 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 舞庭準備 | 8時00分~ | 祓川では「御講屋(ミコウヤ)」と呼ぶが、狭野では「舞庭(マイニワ・メニワ)」と呼ぶ。舞手や地区の班長を主に作られる。太鼓に合わせて「サオ」と呼ばれる大宝の注連を立てる。その後、柴垣を作り、「ニッタンガッタン」と呼ばれる天蓋を設置する。 |
2 | 斎食 | 18時00分~ | 神楽の当日18時頃から、支度部屋である狭野児童館で行われる。舞手・関係者・来賓などが揃い、割烹酒・握り飯・煮染めを食する。その後、舞手と関係者は神社に参拝する。舞手はそれぞれの装束を着用し、採り物を持って行く。 |
3 | 浜下り | 19時00分~ | 19時頃から。狭野神社本殿で降神の儀が執り行われた後、隊列を組み、白布を隊列の外側に持つ。神輿を中心に、楽・灯籠が先頭に立って練り歩き、舞庭に入る。その際、客は隊列周囲の白布を持って一緒に練り歩く。白布を持つと一年間無病息災でいられると云う。 |
4 | 太鞁の事 (たいこのこと) |
20時00分~ | 唱教のみ。神主が太鼓を打ち鳴らしながら唱教する。平成11年頃に復興した。 |
5 | 一番舞 (いちばんまい) |
20時05分~ | 子供の2人舞。白笠・白衣・白袴・白足袋を着用し、右手に錫杖・左手に扇子を持って舞う。神舞の始まりを告げる舞。 |
6 | 神師(かんし) | 20時20分~ | 大人の4人舞。白笠・白衣・青袴・白足袋を着用し、右手に錫杖・左手に刀を持って舞う。4人舞と5人舞(舞上げ)から構成される。神舞の中で基も重要な舞で、神舞の中心メンバーが舞う。 |
7 | 飛出(とっで) | 20時50分~ | 鬼神の1人舞。黒狩衣・白衣・白袴・赤襷・赤帯・黒足袋を着用し、右手に扇・左手に藤の鞭を持って舞う。名前通り祭壇の下から飛び出てくる。 |
8 | 地割(じわり) | 21時00分~ | 大人の2人舞。白鉢巻・単衣・赤帯・伊賀袴・白足袋を着用、右手に錫杖・左手に襷を持って舞う。狭野の神舞の中で最も長い番付。「右手錫杖に左手襷」・「両手襷」・「右手錫杖に左手弓矢」・「オンズの4本矢舞」の4部で構成される。最後に舞庭の四方に矢を置く。 |
9 | 金山(かなやま) | 21時40分~ | 鬼神の1人舞。派手な狩衣と袴・黒足袋を着用し、右手に扇子・左手に藤の鞭を持って舞う。最後に地割りが四方に配した矢をコミカルな動作で回収する。 |
10 | 志目(しめ) | 21時50分~ | 鬼神の1人舞。白笠・頬被り・緑狩衣・赤帯・白袴・白足袋を着用し、右手に扇子を持って舞う。舞い方も歩幅を小さくするなど、女神を意識している。 |
11 | 高幣(たかび) | 22時00分~ | 鬼神の1人舞。白笠・頬被り・ピンクの狩衣・白袴・白足袋を着用し、右手に高幣・左手に扇子を持って舞う。「志目」と同じく小股で舞う。 |
12 | 四ツの事 (よつのこと) |
22時10分~ | 飛出・金山・高幣・志目の4鬼神が順に神庭に入って舞う。飛出面と金山面が祭壇前で唱教を行う。唱教の中に五大明王の名が見られるなど、仏教色が非常に強い。 |
13 | 臣下(しんか) | 22時25分~ | 鬼神の1人舞。頬被り・黒単衣・赤帯・股引・黒足袋を着用し、しゃもじ・擂り粉木・お玉を腰に差し、右手に錫杖・左手に竪 杵を持って舞う。この番付のみ、他の面舞と舞い方が異なり、竪杵を小脇に抱え、猫背で錫杖を足下で鳴らしながら小走りで神庭内を円に廻る舞う。番付中、最 も客の笑いを誘う。信州の臣下大明神を表現しているが、採り物・唱教などから田の神舞と思われる。 |
14 | 踏剱 (ふんつるぎ) |
22時45分~ | 「錫杖と襷」「両手襷舞」「剱舞」「中入」の4部構成。基本は「カギ」と呼ばれる大人2人の舞で、「地割」と同じ装束。 「両手襷」舞までは地割に同じ。その後、右手に錫杖・左手に刀を持って舞う。終了後「中入」が始まる。化粧をし、鉢巻(結び目を額に作り、余った先を角の ように立てる。)・白衣・手甲・伊賀袴・白足袋を着用し、両手に藤の鞭を持った子供が入場、大人は右手に刀を持ち替えて3人で舞う。その後子供が真中に入 り、両脇から差し出された刀の切先を握って舞う。構成は祓川の「剱」とほぼ同じ。 |
15 | 花舞 (はなまい) |
23時50分~ | 子どもの12人の舞。未就学児から小学生が舞手。白笠・白衣・白袴を着用し、右手に錫杖・左手に御幣の付いた榊の枝を持って舞う。最後は全員で手を繋いで「岩潜り」を行う。 |
16 | 長刀 (なぎなた) |
0時10分~ | 素面の1人舞。装束・採り物・「両手襷舞」までは「地割」に同じ。終了後、白衣・赤襷(結び目に御幣)・青袴・白足袋を着 用した1人が 長刀を持って入場、緩やかに頭上で振り回しながら、振り回す流れで舞手に長刀を渡す。頭上・腰回りで廻す他、切り上げ・切り下げを行い、最 後に長刀を抱えて前後転を繰り返す。 |
17 | 箕剱 (みのつるぎ) |
0時50分~ | 素面の舞。いわゆる「杵舞」の事。「杵舞」と「箕舞」の2部構成。「杵舞」は大人8人の舞で、白笠・白衣・青袴・白 足袋 を着用し、右手に錫杖・左手に竪杵を持って舞う。2列横隊から縦横のすれ違い・円形へと変化する。終了後、千早・白衣・白袴・白足袋を着用し、箕を被った 子供2人が登場・祭壇前に座って舞った後、大人が肩に渡した杵橋の上に立ち、箕に入れた切り紙を蒔く。この系統の舞は旧薩摩藩及び宮崎平野部によく見られ るのに対し、宮崎県央部より北には見られないのが特徴。 |
18 | 鉾舞 (ほこまい) |
1時20分~ | 鬼神の1人舞。烏帽子・狩衣・白衣・白袴・白足袋を着用し、右手に扇子・左手に三叉鉾を持って舞う。高千穂峰に立つ天の逆鉾を表現している。 |
19 | 本剱 (ほんつるぎ) |
1時40分~ | 大人の1人舞。装束・舞の構成は「一人剱」に同じ。両手で刀を扱う。 |
20 | 住吉 (すみよし) |
2時20分~ | 鬼神の1人舞。毛笠・頬被り・直垂・白衣・青袴・白足袋を着用し、右手に扇子・左手に藤の鞭を持って舞う。住吉大明神の由来を唱える。唱教は祓川の「住吉」と同じような構成だが、神名が一部異なる |
21 | 一人剱 (ひとりつるぎ) |
2時45分~ | 大人の1人舞。装束・採り物・「両手襷舞」までは「地割」に同じ。終了後、刀1振を持って舞う。舞い方は「踏剱」とほぼ同じ。 |
22 | 柴荒神 (しばこうじん) |
3時25分~ | 鬼神の1人舞。毛笠・狩衣・白衣・白袴・白足袋を着用し、右手に扇子・左手に藤の鞭を持って舞う。神歌から、元々は鬼神と素面和歌で問答する2人舞と推定されるが、素面舞の方は失伝している。 |
23 | 大神楽 (おおかぐら) |
3時55分~ | 大人8人による舞。装束や舞等は神師と同じ。 |
24 | 三笠舞 (みかさまい) |
4時35分~ | 鬼神の1人舞。毛笠・黒狩衣・白衣・白袴・白足袋姿で、右手に扇子・左手に藤の鞭を持つ。 |
25 | 御酔舞 (ごすいまい) |
5時00分~ | 「瓶舞(びんめ)」とも言う。大人の2人舞。白笠・白衣・白袴・白足袋を着用し、右手に錫杖・左手に白紙を巻いた焼酎の五 合瓶を持って舞う。左手の焼酎は舞の間、左手で常に捧げるように持ち、途中から「オンパシッ」という掛け声とともに舞っては飲んで首を振るという動作を繰 り返す。こういった舞は祓川を始め、他の神楽でも見られない。 |
26 | 龍蔵 (りゅうぞう) |
5時20分~ | 鬼神の1人舞。毛笠・頬被り・黒単衣・白衣・赤帯・白袴・白足袋を着用し、右手に扇子・左手に藤の鞭を持って舞う。龍蔵大神を表現している。 |
27 | 小房 (こふさ) |
5時55分~ | 素面の2人舞。単衣・伊賀袴・赤帯・白足袋を着用し、右手に錫杖・左手に御幣の付いた棒を2本持って舞う。前半部は「地割」に同じ。後半部は御幣の付いた棒を両手に持って舞う。その後、2本の棒を十字に組んで左手に持って舞うなど、後半部分は他の番付にはない舞い方をする のが特徴。他の神楽でもあまり見られない。 |
28 | 手力男 (たぢからお) |
6時35分~ | 鬼神の1人舞。毛笠・狩衣・大口袴・黒足袋を着用し、右手に扇子・左手に藤の鞭を持って舞う。天岩戸神話の太力男尊を表現 している。唱教が終わると、祭壇下に置かれた天の岩戸(と書かれた戸板)を放り投げて終わる。この頃丁度夜が明ける。この番付の唱教も、非常に仏教の影響 が強く残る。 |
28 | 直会・霧島講 | 神楽終了後の午後4時頃より狭野児童館で直会が行われる。舞手関係者一同揃って慰労会を行う。ある程度直会が終了した午後 7時頃、「霧島講」が始まる。まず「霧島様」と称された石(霧島山周辺で見られる火山岩)が祀られた祠を担ぎ、その宿替えを行う。宿は希望制で順番は特に 決めておらず、新築や増築した家屋などに置かれる事が多い。宿に到る道中では、太鼓やアタリガネ・神歌などで囃す。神歌は神楽の「浜下り」の神歌と同じで ある。 |