コラム「高原町の歴史(神話編9)」
天孫降臨説話(その1)
さて、前回連載から2ヶ月も過ぎてしまいました。
神話編という事で、前回は神武天皇説話について取り上げましたが、今回は高原町にあるもう一つの神話「天孫降臨説話」について取り上げてみたいと思います。
と言っても、天孫降臨説話がいつ頃から伝わっているのか、神武天皇説話よりもよくわからないのが実情です。
この天孫降臨説話、一つの説話のようにも見えますが、実際は「天孫降臨」「天の逆鉾」の二つに分かれます。
まずは「天孫降臨説話」について。
天孫とは天照大神の御孫であるニニギノミコトの事。そのニニギノミコトが高天原から降った先は、『古事記』では「竺紫日向之高千穗之久士布流多氣」、『日本書紀』では「日向襲之高千穗峯」「筑紫日向高千穗槵觸之峯」「日向槵日高千穗之峯」となっています。
ここで「高千穂峰」という名称が出て来ましたが、また別の問題が。今ある「高千穂峰」って一体いつから「高千穂峰」という名称になったのか。だいたい18世紀前後には「今の高千穂峰=天孫降臨の地」と一部の人の間では話題になっていたのでは、と考えます。なぜこんなに歯切れが悪いのか。端的に言うと、古代から中世にかけて記された古記録がない事に尽きます。なので、高千穂峰がいつからそう呼ばれていたのかも、全くわかりません(そもそも、個別の山名があったのかすらわかりません。新燃岳ですら、享保噴火以前は無名の山でしたから)。
「宮崎県」「天孫降臨」と言えば、県北の高千穂町が有名です。こちらの史料根拠として使われるのが、鎌倉時代に作られた『釈日本紀』中にある『日向国風土記逸文』でしょうか。
日向の国の風土記に曰く、臼杵の郡の内、知鋪の郷、天津彦々火瓊々杵尊、
天の磐座を離れ、天の八重雲を排けて、稜威道別き道別きて、日向の高千穂の
二上の峰に天降りましき、
ここに「臼杵の郡」と書いているのが、高千穂町が天孫降臨の地と呼ばれている由縁でしょう。
『釈日本紀』が書かれた鎌倉時代辺り、今の高原町はどんな感じだったのか、これも実際よくわかりません。発掘調査の結果、平安時代末期辺りはいくつかの集落があったようですが、発掘調査で出て来る遺跡の殆どが畠の畝遺構が多いので、詳細は不明です。その畝も短期間で噴火にやられて埋没し、50~100年経った頃には完全に山化したようで、狩猟用の落とし穴ばかりが検出されます。
という感じなので、高原町で「天孫降臨説話」について聞かれるのは、けっこうしんどい事なんです。
(文責 大學 康宏)
神話編という事で、前回は神武天皇説話について取り上げましたが、今回は高原町にあるもう一つの神話「天孫降臨説話」について取り上げてみたいと思います。
と言っても、天孫降臨説話がいつ頃から伝わっているのか、神武天皇説話よりもよくわからないのが実情です。
この天孫降臨説話、一つの説話のようにも見えますが、実際は「天孫降臨」「天の逆鉾」の二つに分かれます。
まずは「天孫降臨説話」について。
天孫とは天照大神の御孫であるニニギノミコトの事。そのニニギノミコトが高天原から降った先は、『古事記』では「竺紫日向之高千穗之久士布流多氣」、『日本書紀』では「日向襲之高千穗峯」「筑紫日向高千穗槵觸之峯」「日向槵日高千穗之峯」となっています。
ここで「高千穂峰」という名称が出て来ましたが、また別の問題が。今ある「高千穂峰」って一体いつから「高千穂峰」という名称になったのか。だいたい18世紀前後には「今の高千穂峰=天孫降臨の地」と一部の人の間では話題になっていたのでは、と考えます。なぜこんなに歯切れが悪いのか。端的に言うと、古代から中世にかけて記された古記録がない事に尽きます。なので、高千穂峰がいつからそう呼ばれていたのかも、全くわかりません(そもそも、個別の山名があったのかすらわかりません。新燃岳ですら、享保噴火以前は無名の山でしたから)。
「宮崎県」「天孫降臨」と言えば、県北の高千穂町が有名です。こちらの史料根拠として使われるのが、鎌倉時代に作られた『釈日本紀』中にある『日向国風土記逸文』でしょうか。
日向の国の風土記に曰く、臼杵の郡の内、知鋪の郷、天津彦々火瓊々杵尊、
天の磐座を離れ、天の八重雲を排けて、稜威道別き道別きて、日向の高千穂の
二上の峰に天降りましき、
ここに「臼杵の郡」と書いているのが、高千穂町が天孫降臨の地と呼ばれている由縁でしょう。
『釈日本紀』が書かれた鎌倉時代辺り、今の高原町はどんな感じだったのか、これも実際よくわかりません。発掘調査の結果、平安時代末期辺りはいくつかの集落があったようですが、発掘調査で出て来る遺跡の殆どが畠の畝遺構が多いので、詳細は不明です。その畝も短期間で噴火にやられて埋没し、50~100年経った頃には完全に山化したようで、狩猟用の落とし穴ばかりが検出されます。
という感じなので、高原町で「天孫降臨説話」について聞かれるのは、けっこうしんどい事なんです。
(文責 大學 康宏)